流した涙は無駄にしたくない。めまい、嚥下障害との戦いに打ち勝って(朝田さん 62才)
朝田さんは、まさかこんなことがわが身に起こるなんて想像だにしなかった。
それは白髪染めから始まった。
1月に1回位は白髪染めをしていて今まで何事もなかったのだ。
頭にできた小さなおできの傷口から白髪染めの液が入ったことにより、起こったというのは病院の先生からの説明から知ったことだった。
いろいろな障害がある日突然起こって日常の生活に支障がきたすだけでなく、生きているということさえ苦しい日々が始まった。
めまい、嚥下障害、歩行障害、皮膚感覚のマヒである。
めまい1つでさえ大変なのに、その上に、嚥下障害や、歩行障害、皮1枚被ったような皮膚感覚の異常が体の右半身に起こったのだ。
最初は脳梗塞や脳出血などの何かが脳に起こったのかと思って病院に行った。
結果は✖だった。
それじゃあなぜこういうことが起こったのか?
最初は原因が全く分からなかった。
いろいろ調べてもらううちに判明したのが白髪染めが小さな傷口から入ったためということだった。
朝田さんにとって、原因が分かってほっとしたものの、それじゃあこの症状が治るのかということが心配になる。
医師に聞くと難しい顔をされる。
リハビリに励むしかないらしい。
心は黒い雲に覆われる。
自分なりにリハビリに頑張ろうと思うのだが、現実は苦しすぎる。
めまいがあるので起き上がるとくらくらする。
何とか起き上がるのだが、今度は右半身が思うように動いてくれない。
杖を突いてやっと歩くのが精いっぱい。
ちょっとすると息が切れてくる。
前はこんなことはなかったのに。疲れやすくもなっている。
それでも歩けないと家事さえできない。
頑張っても頑張っても先が見えてこない。
そんな自分に心がくじけそうになる。
普通だったら楽しい食事も苦しみの種。
食事を飲みこもうとするとむせたり咳き込んだりする。
食べるという普通のことが苦業以外の何物でもない。
でも食べないと生きていけないので少しづつ食べる。
それも咳き込んだり、むせたりしながら。
こんな日々を何とか1月頑張って過ごしたが、もう無理!!と心が悲鳴を上げてしまった。
もう一歩も前に進めなかった。
しかしこのままの状態で、一生を終えることにも耐えられなかった。
何とか今の状態から脱せる方法が知りたかった。
見つけたのは、たつみ鍼灸院。
(はりでよくなる??)にわかには信じられることではなかった。
(病院でよくならなかったのがはりでよくなるなんてある?)
半信半疑ながらも藁にも縋る思いで予約を入れた。
鍼灸治療を受けたことのない人間にとってはりはやっぱり抵抗があったことは確か。
しかし勇気を出して受けてよかったというのが今の朝田さんが言えることだ。
1回の治療で、嚥下障害が少し良くなった。
少し食べやすくなってきた。
4回の治療後、めまいが少し良くなってきたので、杖を使わないで歩く練習をしようと前向きの気持ちなってきた。
朝田さんのめまいはまっすぐ立っていることができない。
引き込まれるように、頭がぐらぐらする。
歩くときはふらふらするし、立っている時や座っている時は頭が持っていかれそうになるのだ。
頭から傾いていきゆらゆらしてする。
とてもひどいめまいだ。
それでも以前は治ると思えなかったが今は治ると信じられる自分がうれしい。
この調子でいくとよくなると思えるようになってきた。
暗く閉ざされた気持ちに少し薄明かりが差してきた。
日常の家事もつらい、苦しいと思うのではなく、(これもリハビリや)と思ってやれるようになってきた。
決して右肩上がりに良くなったわけではない。
時に足踏み状態になったり(特に雨の降りそうなときは症状がきつく出てしまう。)
それでも少しづつ良くなることが実感できるのではり治療は、続けたかった。
しかし、家人に甘えられるのはここまで。
家が遠いこともあって仕方ない選択だが、症状が2割ぐらいに減った時点で治療を終了することにした。
しかしいつもどうしょうもないあきらめと暗い気持ちを抱えていた過去の自分とは違う。
あとは自分で頑張ろうと前向きの気持ちでいられる自分がうれしい。
